Interview 今村龍之のセッションについて 生きているものは、止まっていない 【インタビュー ショートバージョン】

良い姿勢と、身体が「いい」と感じる姿勢

今村本人は、頭に入ってきた情報を信じて、身体をそっちに合わせがちです。たとえば「こういう歩き方がいい」とか、デスクワークの多い人なら「座り方が悪いから腰が痛くなっているんじゃないか」とか。

外の指標や道しるべを追いかけて「そうすれば健康になるんですよね」「良くなるんですね」と考えるのは、楽かもしれない。けど実態はどんどん離れてしまって、自分の身体は見えていないんですよね。

そうじゃなくて、視点や意識を、もうちょっと自分の身体の状態に向けるのが大事だと思うんです。

「セッション」のはじまり方

大半の方が「どこどこが痛い」とか、なにかしら問題意識を持っていらっしゃるので、まずその問題にアプローチします。
ある程度痛みが取れるとか、身体が楽になるとか、わかりやすい感覚の変化が訪れるところを目指していく。

抵抗感なく始められるように、身体を驚かせないようにアプローチしながら、互いに状態を確認していく。

で、わかってきた〝感じ〟をもとに運動の提案をしてゆくんですが、動かすのは本人なので、その方の日常を尊重しながらやり取りを交わして進んでいく感じですね。

身体へのアプローチは、他人が「これがいい」と言うことではないと思っている。
クライアントが身体を動かして「いい」とか「ちょっと違う」とわかるようになる。「セッション」で、そういう感覚を持てるようになるのがいいと思うんです。

自分の身体とコミュニケートする

今村さんは、本人が、本人の身体とコミュニケーションをとってゆくことを大事にしている。

すごく大切にしています。

でも身体は「喋って」はくれません。身体の声を聴くとか、身体とコミュニケーションすることを、もうすこし具体的に言葉にすると?

「本音と建前」みたいな言葉でいえば、「建前」は頭が抱いていて、「本音」は身体の方が持っている感じがします。

例えば「足が向かない」とか「目が離せなくなる」とか、そんなふうに身体は〝感じていること〟を表現しますよね。

感じ取れるようになっていくのは、すごく大切なことだと思っているので、その手伝いができればと思う。
でも感じているのに自信を持てずにいる人がいる。「気のせいかもしれないけど」と前置きをしたり、「わからない」と感覚を閉ざしてしまっていたり。

責任というと硬いけど、身体が感じていることに〝応答〟できるようになるといい。

常に変化しているので、基本的にはその人にしかわからない。で、外の規範的な「答え」はだいたい静止している。「健康な状態」とか、止まってるんですよね。

(インタビュー:西村佳哲 2023年初春)

写真 今村龍之

Profile

今村龍之 | Tatsuyuki IMAMURA

1985年新潟県生まれ。Responsive body主宰。2006年 東京・恵比寿でプロアスリートなどが行うトレーニングやリハビリテーションを一般の方に提供する運動施設で働きはじめる。在籍中は、オリンピック選手の海外試合帯同や社会人ラグビーチームでのメディカルトレーナーなど経験。
2016年 個人での活動をはじめ、現在まで身体にかかわる仕事をつづける。

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